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はやくかえりたい⤴なあ⤵
ジェルを塗り終わると、先生は左手でタマをつまみ、右手で握ったエコーの機械をタマに当て始めた。
相変わらずの優しい手つきであった。
様々な角度から機械を当てながら、モニターを確認すること数十秒。
「どうやら、捻転はしてないみたいですね」
お風呂でタマの異変に気づいてから4時間強。
ここでやっと、一息つくことができきた。
大丈夫だろうとは思ってはいたけど、我が子のこととなるとそれでも心配になってしまうのが親心ってものですよ。
とりあえず睾丸壊死の危機は回避。
あ~、よかった。
「そういえば、明日も仕事なんだよなぁ…」
タマに塗られたジェルをタオルで拭いてると、急に現実が顔を出してきた。
ジェルをふき取り、依然腫れたままのタマをズボンの中にしまい込んで、一旦待合室へ移動。
待つこと数分。
診察室から出てきた先生に、「鼠径ヘルニア」でも睾丸が腫れることがあるから、それを調べるためにCTを撮ると説明された。
(わ~、はやくかえりたい⤴なあ⤵)と、さっきまでの緊張感は何処へやらといったナメた心境で同意書にサインをした後、撮影室へ通された。
部屋の中央にどっしりと鎮座する白い機械が一つ。その機械の一部分に“気になるモノ“を見つけてしまった。
控えめながらもしっかりと弊社のロゴが刻まれているのである。
お、お、お前ぇぇぇぇ!!!
こんなところにまで…!
くっ…、お前に苦しめられているが、お前に助けられるのか…。
100年後くらいに故事成語になりそうな状況の中、可動式のベッドの上で横になる。
「息を吸って、止めてください」、「楽にしてください」の機械音声に合わせて呼吸をしながら、3回ほど撮影をした。
その間、「お前の息の根を止めて楽にしてやろうか!?」などと、弊社製品に対して謎のケンカ腰で挑む。
この検査で分かったのは、己の器の小ささであった。
その節は大変失礼いたしました。だって眠かったんだもん。
今、私がこうして、曲がりなりにも健康でいられるのは、会社が事業を通して社会に貢献しているおかげです!
本当にありがとうございます!社員である前に、一ファンでもあります!!
媚も売ったところで閑話休題。
待合室で待つこと数分。先生に呼ばれ、再び診察室へ。
診察室に入ると、今度は撮影技師さんらしき人もいた。
椅子に座るよう促され、着席した私はデスクの上のモニターに目を向けた。
そんな私の様子を確認するすると、先生もモニターに顔を向け、話し始めた。
「これが先ほど撮ったCTの画像なんですけど…」
「まあ、腫れてますね」
言ってくれるな。見ればわかる。
口に出して改めて言われると恥ずかしい。
モニターには以下のような画像がでかでかと映し出されていた。
現物を見られるのも恥ずかしいが、他人に自分の身体(主に局部)の画像をじっくりとみられるのも、これはこれで恥ずかしい。
この数時間であらゆる種類の辱めを受けて、もう疲れた。
俺が女騎士だったら「くっ…、殺せ!」と言ってたからな!
大人3人が、深夜1時の診察室で、成人男性の局部の画像を真剣に見つめる。
この日、日本で最もシュールな空間だったに違いない。
この先、こんな恥ずかしいこともないだろうなぁ…。
ないよね??
そんな我々の間に流れる微妙な空気を破り、口を開いたのは、この場に新たに加わった技師さんであった。
「最近、性行為とかってしましたか?」
こ、言葉責め、、、だと、、?
文字通り身体の中から外まで、全てをさらけ出した俺に、まだ追い打ちをかけるなんて!
あんまりだわ!
だからバカなこと言ってないでさっさと答えろっての。
はい…、すいません。
してないです…。
そう、こんなことは考えるまでもない。
答えはいいえ、No、Non、Neinである。
彼女どころか、友達だっていないんだから!
自信を持って答えられるぞ!
してませ~ん
自分で言ってて悲しくなってきたな…。
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